自立学習の環境に向けて

まず初めに、教育に関する興味深い記事があったので、下記にて一部引用します。

 

※文中の「おおたさん」は、麻布中高卒、東京外国語大学中退、上智大学卒の教育ジャーナリスト、おおたとしまささんのことです。

 

 

 

引用元:

 

生き抜く力を育てる「余白の時間」…無力な親ができることは?【「教育」が「虐待」に変わるとき 第3回】

 

https://trilltrill.jp/articles/1185007?fbclid=IwAR2I--DlP-cupRwGtRz6P9vcd2hnBoQeyvTZJh2P1VgwptPVqwD2QTheuhQ

 

 

(引用文)

 

 

『先行き不透明なこの時代、子どもの将来に不安を感じる親が、わが子になるべくたくさんの教育をほどこそうとする風潮があります。

 

ですが、中には子どもが大きな負担を強いられているようなケースや、課題をさぼったり期待通りの成果を出さない時に、つい強く叱りすぎてしまったり、時には罰を与えてしまったり…。そんな話を聞くことも決して少なくはありません。

 

どこまでが教育で、どこからが虐待なのか? 何が親をそこまで駆り立ててしまうのか?

 

《中略》

 

――これからのグローバル時代を、子どもに「たくましく生き抜いてほしい」と願う親御さんは多いと思うのですが、どんな力が必要になるとお考えですか?

 

おおたさん:私は、真のグローバル教育というのは、例えば、手元には1本のナイフしかないけど、これを使って森の中でどう生き延びるか? というようなことを考える訓練をつむことだと思っています。

 

よくグローバルな人になるためには、英語やらディベート力やらあれこれ必要だと言われますが、大切なのはどれだけ多くのツールを持っているかではなく、自分の中の個性的なナイフをどれだけ鍛えておくことができるかだと思います。

 

《中略》

 

おおたさん:親が与えすぎると、子どもは自分で選ぶことも考えることもできなくなります。それでは、よく言われる「指示待ち人間」になってしまいますよね。「指示待ち人間」ではこれからの世の中生きていけないということは、もう親御さんはとっくにわかっているはずです。

 

――確かに。…そのはずなのに、気が付けばつい与えすぎてしまう。いったいなぜ!?

 

おおたさん:親自身が与えられる以外の生き方を知らないからでしょう。必要な武器を自分で考えて、自分で手に入れて、自分で磨くという経験がないから、不安で怖い。だから、子どもにあれもこれも与えようとしてしまうのです。

 

周囲に、「自分の道は自分が選ぶ」と言える大人がどれだけいるでしょうか? 大人たちが自分で自分の道を選んでいくことができていないから、無意識のうちに子どもたちにも自分の道を選ばせまいと仕向けてしまうのです。

 

■ボーっとする時間…「余白」が子どもを育てる

 

おおたさん:もちろん、子どもにたくさんの機会を与えてあげたい、いろいろな能力を伸ばしてあげたいという親の気持ちは間違っていませんし、よくわかります。

 

《中略》

 

ですが、そもそも子どもというのは、ボーっとしている時間に一番育つのです。そういう時間を奪ってしまったら、育つものも育たなくなってしまいますよ。

 

――ボーっとしている時間に育つものとは?

 

おおたさん:子どもは暇な時間があれば、それをどう使おうか考えて、そこで自発性が芽生えます。

 

例えば、暇な時間があって、本を読んでも絵を描いてもつまらない。で、今度は庭に出て虫を取ってみたら、「あ!これ、すっごく楽しい!」と時間を忘れて取り組めたとします。

 

そうすると、自分が何を好きで、何をしている時が幸せで、何を欲しているのかを感じ、自分自身を知ることができます。それが、「人生の羅針盤」を作るのです。

 

《中略》

 

常に予定を埋められて、ボーっとする時間を奪われると、人生の羅針盤を使いこなせない人になってしまいます。主体性なく、なんとなく世間的に良いと言われる方向を向いて生きるしかなくなった状態で、いくら高学歴や仕事スキルを得ても何の意味があるのでしょうか?

 

《中略》

 

おおたさん:親が子どもにいろいろなことを与えるのは、例えるなら、スマホに使うのか使わないのかよくわからないようなアプリを、とにかく大量に入れるようなものです。

 

特に、今の親御さんは、正解がわからないといわれているこれからの時代に向けて、使えそうなアプリを全部入れておかなければという発想になって、インストールすることにばかり時間を費やしてしまっているように思います。

 

でも、本当にやらなければならないのは、スマホ自体の性能をあげることです。OS(基本ソフト)やCPU(中央演算処理装置)をアップデートして、将来、アプリをサクッとダウンロードできるような本体にしてくことが大事なわけです。』

 

 

(引用終了)

 

 

 

--------

 

 

 ボーっとする時間が子どもを育てる

 

 

については、4つ前のブログ(2019年5月5日)などでも書いた、

 

 

新しいことを学んだりアウトプットできるようにするためには、寝たり運動したりボーっとしたりといった「拡散思考」が重要になる

 

 

という部分にも通じるところがあると思います。

 

 

 

--------

 

 

 

16万人の脳画像を見てきた脳医学者である瀧靖之氏は、著書『「脳を本気」にさせる究極の勉強法』で

 

 

『「勉強=いいこと」は、人間の本能的価値観』

 

 

と述べています。

 

 

 

脳は、最低限の安心できる環境さえ整っていれば、基本的には人から強制されなくとも

 

 

「学びたい欲求」

 

 

を既にもっているのです。

 

 

 

興味の対象はそのときどき、人それぞれによって様々ですが、好きなものを追求しているときは、総じて脳は活発に活動し、成長します。

 

 

そして、その脳の成長によって、いずれ学ぶであろう「より実用的な知識」の習得にも耐えうる思考力が培われていくのです。

 

 

 

ここで、せっかく子どもが何かに興味をもっているのに「実用的じゃないから」といってそれを取りあげたり、子どもが興味を示していないものを強制したりすると、子どもの脳はいったいどうなるでしょうか。

 

 

活発に働くどころか、脳が萎縮してしまう可能性さえ出てくるかもしれません。

 

 

 

後述しますが、オールラウンドの塾生でも、そのときどきで興味のある科目を自由に勉強し続けた結果、総合的に成績が上がった生徒が何人かいます。

 

その結果を踏まえると、

 

 

「急がば回れ」

 

 

といった姿勢で、まずはその人それぞれが発信する知的好奇心を満たせるような環境をつくることも、教育アプローチとして有効な手の一つなのではないでしょうか。

 

 

そんなことを思わされる記事でした。

 

 

 

 

--------

 

 

 

次に、直近の塾の状況について。

 

 

 

高3生のHU君は、先々週に部活が終わり、本格的な受験体制に入りました。

 

それに合わせ、先週保護者とともに、受験体制についての面談を行いました。

 

 

これまでずっと部活優先で、ご両親もHU君について、「受験に間に合うのか?」、「勉強量を急に増やせるのか?」といったことをとても心配されていたので、面談ではこちらから、

 

 

・渡している受験テキスト類が、受験のどこまでのレベルをカバーしているのか。

 

 

・インプット作業から得点に至る一連のメカニズムは、どうなっているのか。

 

 

・渡しているテキスト類や過去問等を使い、上のメカニズムに則って、今後どういう道筋で点数アップへと結びつけていくのか。

 

 

・その道筋を達成する期日設定は、それぞれどうなっているのか。

 

 

・その道筋を管理し、期日内に目標を達成するための具体的な諸サポートは、それぞれどうなっているのか。

 

 

・僕自身の体験、受験仲間、過去の塾生などの例から、受験生はどういった諸障害につまづきやすいのか。

 

 

・上の障害を最小限に抑えるために効果的な、「塾で行うサポート」と「家庭でのサポート」について。

 

 

・これらのサポートの結果、過去の塾生たちが時系列でどのように力を伸ばしていけたのか。

 

 

・受験に限らず、将来のため鍛えるべき力とはどういうものか。

 

 

 

といったことをお伝えしました。

 

 

 

ご両親も、当初イメージされていた「通常の学校や塾で行われるであろう指導体制」とはかなり違った当塾の上記サポート体制に驚かれていましたが、受験を乗り越えることに特化した当塾独自のシステムについてあらためてご理解をいただき、この体制で進めていきながら様子を見ていこうということになりました。

 

 

面談後1週間が経ちましたが、HU君は粛々と日々の課題をこなし、現在非常に安定した好スタートを切れています。

 

 

が、受験当日までは、「受験生は、いつ何時メンタルをやられてもおかしくない」という心構えで、引き続き最善のサポートを行います。

 

 

 

他にも、KH君やKO君など、部活が完全に終わった受験生たちから順に、授業時間外も塾へ来て粛々と各自の課題を進めています。

 

 

まだ部活が続いている生徒も数人いますが、おそらく夏休みまでには全員部活が終わるので、本格的な受験体制に入ってからも、それぞれにあらためて学習プラン・メンタル・質問対応などで最善のサポートを行います。

 

 

 

--------

 

 

 

高2生、高1生は、一部テストの成績表が返ってきました。

 

 

興味深いのは、Hさん(高2)の生物100点満点や、Mさん(高2)の化学100点満点など、塾生たちの何人かが、塾の指導科目だけにとどまらず、指導外の科目についても成績を維持向上させている点。

 

 

 

僕自身は、「他の教科の勉強時間を奪ってでも『僕が教えられる教科』だけを塾で勉強させよう」とは考えていません。

 

 

いろいろと試行錯誤は続けていますが、現在は、たとえば日本史を勉強したい生徒には日本史を勉強してもらいつつ「より効率的な暗記の仕方」のアドバイスをするなど、基本的には各自の「したい勉強」を優先させています。

 

 

なので、1教科だけ集中的に勉強する生徒と何教科も回しながら勉強する生徒が混在しているような学習環境になっていますが、そんな中ですべての生徒に共通している

 

 

「学力を上げる勉強のしかた」

 

「目標達成への道筋を、自分で管理していく力」

 

 

などを鍛えています。

 

 

 

「学力を上げる勉強のしかた」を身につけるためのサポートが塾のメインサポートの一つなので、4つ前のブログ(2019年5月5日)でも書いた「知識の定着には『拡散思考』が重要」という観点から、明らかに脳疲労を起こしている生徒には授業中であれ小休憩をとるようこちらから促すこともあります。

 

 

僕自身は、「質問対応」、「以前の質問内容の復習」、「いま学んでいる範囲で、より重要な情報とそうでない情報の区別についてのアドバイス」に加えて、目標に対し効率の悪いやり方を生徒がしていると思われる場合に「より効率の良いやり方」のアドバイスをしたり、目標未達のときに「どうやり方を変えれば次回の結果を改善できるか」を一緒に考えたりといったサポートをメインに行い、それ以外は基本的に本人たちがそれぞれ自由に伸び伸びと勉強できるやり方(科目の選び方)を尊重し、それに合わせて柔軟に対応しています。

 

 

なぜなら、そうすることで、教科によらない「勉強のしかた」自体を身につけることができるようにもなるし、勉強に対する

 

 

「強制的にやらされるもの」

 

「面白くないもの」

 

 

といったネガティブなイメージを、

 

 

「学びたいことを自分自身で探したり選んだりでき、その知識をどんどん深めていける機会」

 

「そうやって頑張った分だけ、結果が出せるもの」

 

 

といったポジティブなイメージへと変えていけるようになる、と考えているから。

 

 

 

いまのところ何人かの塾生が、塾で学んだ勉強のしかたを活かし「能動的・主体的に勉強する力」を鍛えた結果、指導教科にとどまらず指導教科以外の点数も伸ばせるようになってきています。

 

 

なので、この状態を維持しつつ、引き続きプラスアルファの工夫をしていきたいと考えています。 

 

 

 

--------

 

 

 

大学受験までは、試験範囲や内容や試験日が分かっている状態で、かつ1つだけに答えが定まる「唯一解」を求めればよい問題がほとんどなので、何をすれば目標を達成できるかが非常に分かりやすいです。

 

 

が、大学では唯一解の割合も減り、さらには問題自体を自分で設定しなければならない場面も出てきます。

 

 

そして社会に出れば、またさらに「試験日がない(分からない)」、「何を試験されているのか分からない」、「そもそも試験(査定)されているのかどうかが分からない」といった状況で、様々な人たちから日々査定されることになり、それらの積み重ねが人生の大きな変動へと結びついていきます。

 

 

そんな風に、気を抜くと知らぬ間に淘汰されてしまうような学生以後の環境に対応していくためには、何が重要でしょうか。

 

 

「ただ外部からの情報だけをひたすら取り入れること」ではなく、外部情報の良し悪しを判別したり新しい考えを生み出したりと、「自分の頭で考え続けていくこと」が非常に重要だと、僕はそう考えます。

 

 

 

終身雇用の終焉やAIの台頭といった先の見えない時代で、ただ受動的に翻弄されるのではなく、能動的に自分の人生を切り開いていく力を鍛えるためのサポートを、今後も考えていきたいと思います。